主夫業をこなす

2011.12.03

私は調理は嫌いではないし、洗濯だって機械を使えば簡単だ。しかしそれを自分の必要に応じてやるのと、家族のための義務として日々繰り返すのとは全然違う。それを実感したのは、数年前に妻と次男が十数日の旅に出て、長男と留守番をした私が主夫業をした時である。一番気を遣ったのは、当時高校生で食べ盛りの長男の食事の世話だが、これは薄切り牛肉を焼いて大根おろしと醤油で食べるとか、缶詰のビーフーシチューをウスターソースと粗挽き胡檄で味を調え、市販のドレッシングーミックスを使ったサラダを添えるとかいう程度のメニューではあるが、あまり手をかけずに日々趣きを変えるのにはそれなりに苦労した。

[参考情報]
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洗濯もやった。といってもシャツ類はクリーニング屋に出し、下着靴下の類は洗濯機に放り込み、洗い終わると普段はあまり使っていない乾燥機に移しただけだが……。しかしこれが二週間近く続くとけっこうたいへんで、仕事が忙しい時だったら「やってられないよ」という感じ。期間が限られていることもあり、多少は意地も手伝って、できるだけ手抜きせずにやり通したが、一つ一つの作業は簡単でも、全体に目配りして支障のないようにするのには神経を使う。ちょっとサボッていると生ゴミはたまるし、食器洗いをしている時に新聞の集金が来たりするとわけもなく頭に来る。二、三日はまだよかったが、日が経つにつれてイライラしてきて、これを常にやっている主婦の苦労が(ま、多少は)分かった。もちろん息子も手伝ってはくれたが、別に感謝の言葉もない。これは当然で、父親と男の子は互いに照れがあるから「お父さん、ありがとう」なんて言われたらかえって困惑したであろう。この場合は一時的だし、本来のものでない役割を務めるという点で一定の評価が得やすいから救いがある。息子は帰宅した妻に「食事は完璧だった」とボソッと言ったそうで、それで彼女が仰天したから、こっちは「ザマア見ろ、やったぜ!」という気分であった。