秋田県北部の大館市は、冬の風物詩であるかまくらやきりたんぽが有名で、JR渋谷駅前の銅像で知られる忠犬ハチ公の故郷でもある。人口が六万六〇〇〇人余りの市の中心市街地は元気がない。同市の繁華街である大町中央通りで江戸時代末期から営業を続けていた百貨店の老舗「正札竹村」が二〇〇一年七月二日に倒産したからだ。それから一年半たっても、さびたシャッターが下りたままだ。豪雪地帯によく見られる雁木の下を歩く人々の姿もまばらである。
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市の商工課によると「正札竹村のビルはタダにしても引き受け手は現れないでしょうね」という。ある洋品店主によると、正札竹村の倒産は中心市街地の空洞化に拍車をかけたという。「この町はジリ貧だ。安楽死ならまだいいけれど、もがき死にだね。「正札竹村」はあのまま買い手がつかないと、町の衰退のシンボルになってしまうね。ウチの店は客が一人も来ない日がある」「土地はタダってことか」と大館市民を嘆かせたのは二〇〇二年夏のことだ。厚生労働省の外郭団体である「雇用・能力開発機構」が市内の真ん中にある旧大館城に保有していた五〇メートル、八コースのプールを消費税込みの一万五〇〇円で市役所に売ったのだ。信じられないだろうが、本当の話である。同時に、市は同機構から多目的室付きの一五五〇平方メートルの体育館「サンアビリティーズ」も一〇万五〇〇〇円で購入した。中央公民館とつながっているこの施設は市民がよく使っている。一方、大館商工会議所は、隣接する五階建ての「大館共同福祉施設」を同機構から消費税込みの一万五〇〇円で買わないか、と持ちかけられたが断ったという。関係者の説明はこうだ。「再開発にでも使うという企業でも出てくれば、転売するのだが、そんなビル需要はない。維持費ばかりかかるから断ったと聞いている。地価があってもなきがごときだが、固定資産税だけはかかってくるしね」