子供がいない場合はさらに困難を極める。戸籍謄本をたぐって、兄弟などの相続人を全員探し出し、承諾を得なければならない。たいへんな作業で、これだけでも相当の労力と時間を必要とする。では資金負担のメドがつき、五分の四以上の所有者の合意が得られれば建て替えができるかというと、残念ながら、コトはそう簡単ではない。今度は容積率という厄介な問題にぶち当たる。容積率は敷地面積に対する延べ床面積(マンションなら各階の床面積の合計)の割合のことで、七一年の建築基準法の改正で導入された。もともと分譲マンションの建て替え成功例は極めて少なく、再開発希望が全国で一万棟を超すにもかかわらず、わずか三十数例しかない。しかもそのほとんどは、広大な敷地に低層の四〜五階建てという贅沢な造りをしていた公団・公社のマンションだ。これらのマンションでは容積率に余裕があったため、建物を高層化し、土地の一部をデベロッパーに売却することで建築費を捻出できた。またデベロッパーも高層化による増床分を新規分譲することで事業費を回収できた。これは、簡単にいえば、土地の一部と新しい建物を交換する等価交換方式で、入居者の負担はゼロである。つまり一銭も負担することなく、建て替え後の新しいマンションに入居できたわけだ。
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