日本人が内包する「個」の宇宙

2011.12.09

家そのものの成りたちも、ヨーロッパ人は「壁の家」と言われるように、壁に囲まれた「砦」のような家に暮らしてきました。陸続きでつながった大陸の国では、異民族の侵入や略奪に対する備えや、また寒冷な気候から身を守るために、そのような造りの家が発達してきたのです。日本は四季がはっきりとした島国であり、伝統的な日本の家が、柱の上に屋根が傘のように載っただけの簡単な造りだったのは間違いありません。壁らしきものはわずかで、影戸障子を開け放てば四方八方から風が入る、いざとなれば火を放ち、山に逃げ込むという、まことに日本の気候風土と環境に適した「傘の家」だったのです。

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しかし、明治維新によって、それまでの文化的規範が急激に崩れ、太平洋戦争や高度経済成長を経て、国際化された現代、もはや玄関の鍵をかけずに外出しても安心という社会ではなく、ますます「個」が危険にさらされる時代ともなっているのです。主に欧州の住宅に見られる強い防御思想をもった家が当然必要になってくると考えるべきです。その反面、欧米には、日本の生活思想に対する抜きがたい羨望があります。それは、茶道や華道、あるいは禅や武道にみられるような、高い精神性、「個」の内面に広がる宇宙を表現するような日本人の生き方に憧れを感じていると考えられます。欧州の家のような高い防御性能をペースとして持ちつつ、日本人が内包する「個」の宇宙というべきものを満足させる家が、物理的にも精神的にも、これからの家の本質になると思います。